2015.8.12 雲海の彼方へ 白馬三山～白馬大池～白馬乗鞍縦走（ソロ） 3日目

最終日は、白馬三山の最後のひとつ、白馬岳を越えて、三国境～小蓮華山～船越の頭～白馬大池～乗鞍岳から栂池に降りる予定です。




2：43　テントを揺らす暴風で目が覚める。
悪い予報は必ず当たるもので、まだ真っ暗な3時前からすごい風が吹き荒れ、テントを大きく揺らします。
テントの四隅はかなりしっかりと固い地面に打ち付けてあるので底が浮き上がるようなことはありませんが、クロスしたポールは吹きつける風を受け大きくしなります。ただこんな状況でもテントの決して厚くない生地が隔てる外と内は別世界で、テントの中は気温が18℃もあり、外の寒気を遮断してくれています。テントがバタバタと音をたてて歪みますが、不思議と不安感はありません。




自分自身も重しになって手足を広げて、底部の浮き上がりを抑えながら夜明けを待ちます。厚めの雲が空を覆っていてなかなか明るくなってきません。それでも日が登るにつれてやや風も弱まってきたので撤収の準備にかかります。まだ暗いうちから撤収を始めたグループなどは、数人がかりで吹き飛びそうになるテントを抑えながら「うわ～っ！」とか「あああっあかんあかん！」とか「そっち抑えて！」とか悲鳴を上げながら作業を行っていました。



テントの中であらかたパッキングをすませ、ザックを中に残したまま、風下のペグとポールを外しテントを倒します。次にフライシートも外して折りたたんで上に岩を乗っけて押さえておきます。風上のペグも外してポールも抜き取ると、テントは大きく風に煽られますが、中に大きなザックが入ったままなので、飛んでくことはありません。最後にテントをしっかり押さえながらザックを中から取り出してフライシートやポールとまとめてテントを収納すればパッキング完了です。



5：30　パッキング終了
風の無い時が、いかに有り難いかよく解りました。これで雨でも降っていたり、真っ暗だったりしたら余計手間取ること間違いなしです。朝食は昨日同様、シリアルにドーピング剤で簡単に済ませました。



さあ、白馬三山の最後の一つ、白馬岳山頂を目指しましょう。



風は依然治まらず、寒さがハンパありません。白馬山荘から降りてこられた皆さんもガッツリ着込んで防寒されています。
ワタシもフリースの上にダウンを着込んで寒さに備えます。




テン場のテントはあらかた撤収しましたが、まだ粘ってる方もけっこういらっしゃいます。




白馬岳を目指すパーティーには、明らかに30～40ｋｇはありそうなどデカいザックを背負うグループもありました。大学のワンゲル部の合宿かなにかでしょうか？




途中振り返ると毛勝三山（けかちさんざん）に朝日の帯がかかっています。



6：16　白馬山荘到着



ちょうどこの辺が富山と長野の県境のようです。


　
スカイプラザレストランや一号館の建物。これらは長野県側になるのかな？


　
小屋の中には、日の出日の入り時刻や気象情報が。今日は曇り・霧のち晴れとなっていますが・・・外はすごい風と時折雨も降ってきました。



荷揚げのヘリも、小屋への接近を何度かやり直すくらい強い風が吹いています。






ただ山荘からの眺望は圧巻の一言で、剱岳、朝日に輝く立山連峰、槍、穂高はもちろんのこと・・・・




遠く雲海の向こうには、八ヶ岳と富士山も見ることができました。先日、リンクさせて頂いているpoptripさんが、富士山の御殿場コースで壮絶なミッションをポッシブルされましたが・・・お股の具合はいかがでしょうか・・・（合掌）



山頂からの眺めはもっともっとスゴいはずです。風雨も勢いを増してきましたので、ダウンの代わりにレインウェアを上下着込んで頂上を目指します。ザックカバーも被せました。



白馬岳頂上まではガレ岩の道が続きます。



前を登っていた女の子があまりの強風に大きくよろめきます。
すぐ後ろのワタクシも、同じくよろめきます（汗）
ザックが重いと安定感が増して風に強いのかと思ってましたが・・・とんでもない。
ザックは重いものを上にパッキングしているので、無風の時は歩きやすいのですが、重心の高さがアダとなり
少し強い風を受けると、カンタンにカラダがよろめいてしまいます。この先の稜線歩きはバランスを取るのに、相当気をつけなくてはなりません。



　
6：39　白馬岳山頂到着（標高2,932ｍ）
これで白馬三山すべて登頂いたしました。ミッションコンプリートです。

山頂には、新田次郎氏の小説「強力伝」に記されている、富士山の強力（登山案内や重い荷物を運ぶ力持ちの人）、小見山　正さんが担ぎ上げたという50貫（約188ｋｇ）の風景指示板が鎮座しております。土台やほかの部分も合わせると360ｋｇ超にもなるという花崗岩の組石をすべて人の力のみで担ぎ上げたというのですから驚きを通り越して、畏怖の思いがこみあげてきます。たかが20ｋｇでへろへろになっている自分が情けないです。




頂上から見る杓子岳、白馬鑓ヶ岳の勇姿。その周りを囲むアルプスのオールスターもすべて顔を揃えています。




正直、このまま風雨が続くようなら、大雪渓を下ってのエスケープルートも考えましたが、強風とともに頭上の黒い雲が通り過ぎると徐々に天気も回復してきましたので、予定通り白馬大池に続く稜線へと向かうことにします。




素晴らしい稜線歩きとはいえ、ザレた下りなどでは足が止まります。



長野県側の山麓に続く沢筋と、雲海の向こうには戸隠連峰が見え隠れします。






稜線歩きの先に、三国境が見えてきました。



7：18　三国境到着
文字通り、新潟、長野、富山の3県が接している地点です。ここから雪倉岳を経て富山県の朝日岳へと続くルートが分岐しています。



ワタシは白馬大池へと続く稜線の縦走路へ。




気温は10℃ですが、風が依然として吹きつけるので体感的にはもっと寒く感じます。昨日までの暑さがウソのようです。




戸隠方面の山々にかかる雲海と・・・



白馬鑓ヶ岳～唐松岳～五竜岳～鹿島槍ヶ岳の山裾に、波のように打ち寄せる雲海・・・・




7：56　小蓮華山（これんげさん）到着（標高2,766ｍ）
以前は標高2,769ｍあったそうですが、2007年夏に山頂部分が崩落。翌年新たに三角点を設置し測量し直したところ2,766ｍであることが判明しました。頂上には、鉄製の大剣が突き立てられています。鉄剣は昭和2年に白馬岳神社の氏子たちによって立てられたものとのことです。落雷の多いエリアらしく、比較的天候の安定している午前中の通過が無難とされています。鉄剣にも雷撃の跡が残されているようです。




その崩落で、山頂の祠も消失。現在はそこに祀られていた石仏のみが頭部を欠損した状態で残されています。



山頂からは白馬大池も見渡せます。山ガール軍団から歓声が上がっていました。



ここから大池までは雲上の稜線歩きが続きます。





歩きながらの絶景、そして立ち止まっての絶景に、時を忘れます。



ただ、足下は浮石も多く、景色に見惚れてばかりいると危険です。




稜線からは大雪渓が見渡せる場所もありました。ベンガラに沿って白馬岳を目指すハイカーさんの姿がかろうじて判別できます。





ああ、この素晴らしい稜線歩きも、この先の船越の頭を過ぎれば・・・・もう終わりか・・・・



タカネナデシコ（高嶺撫子）や



イブキジャコウソウ（伊吹麝香草）にも
さよならです・・・



あそこに、たどり着きたくない・・・




9：05　船越の頭（ふなこしのかしら）到着　（標高2,612ｍ）



ここまで歩いてきた道を振り返り、



雲海の向こうの戸隠連峰も目に焼き付けて、



一気に白馬大池へと続く、雷鳥沢を下って行きます。

ん？　らいちょうさわ・・・・？






おおおっ！　ライチョウさん。　また会えたね！



一匹かと思ったら・・・うしろから・・・雛が（といっても相当デカいけど）・・・ゾロゾロ。



1・・2・・・.3・・・・6匹もヒナが！お母さんがいるのをいいことに、登山道の真ん中で砂浴びし放題です。



さんざん楽しんだあとは、みんなで灌木の下へ帰って行きました。ライチョウの親子は、ウチと違って皆ついてくるんだね（笑）




雷鳥沢を抜けたら、白馬大池山荘はすぐそこです。




小屋に近づくにつれ、タテヤマリンドウ（立山竜胆）



イワイチョウ（岩銀杏）



チングルマ（稚児車）の群生



アオノツガザクラ（青の栂桜）など
あたり一面のお花畑です。



ここは、蓮華温泉に向かう分岐点でもあるんですね。




9：58　白馬大池山荘到着（標高2,380ｍ）
白馬大池の北西に位置し、6月後半から10月初めまでの営業で、約200名の収容とテン場は30張りほどのスペースがあるようです。また水の補給は無料です。



湖畔のテン場は真っ平で、30張りどころか、もっとたくさん張れそうなくらい広々としています。


　
食堂を覗くと・・・メニューにカルボナーラがありましたので、迷わず注文します。トラットリア・ツギロウ店主としては他店の味も勉強せねば！




う～むっ・・・容器まるごとドカンと置かれたパルメザンチーズが山小屋らしくっていいですな・・・



お味のほうは・・・・・な、なんとウチと味が一緒！・・・・厳選された高級食材を取り寄せていらっしゃるようで・・・（笑）



気温は16℃まで上がってきています。風も稜線とは違いほとんど治まっているので、動き出すと暑いくらいですね。



10：23　白馬大池山荘出発
さあ、お腹も膨れましたし、白馬乗鞍岳に向かって歩き出しましょう。


　
ハクサンイチゲ（白山一華）やゴゼンタチバナ（御前橘）が湖畔にたなびいてます。



大昔活発に活動した火山の噴出物が水を堰き止めてできた湖であるためか、湖岸は大きな溶岩で埋め尽くされ、登山道も大岩のを乗り越えていくような道です。あまり岩のぐらつきとかは無いのですが、足首に結構負担がかかります。傾斜もそこそこあり、見た目以上のシンドさがあります。




10：53　白馬乗鞍岳（しろうまのりくらだけ）　　山頂到着（標高2,469ｍ）
大池からすぐそこだと思っていたのですが、30分もかかってしまいました。十分休んだにもかかわらず、へろへろ感が増してきています。


　
山頂は一面のハイマツに覆われ、すごく平らです。急峻な山が多い白馬にあって、際立った山頂のなだらかさのようです。




正直、このなだらかな山頂の先は下る一方で、あとは栂池自然園からロープウェイに乗って降りるだけ！もう山行は終わったようなもんだと思っていたのですが・・・・・



とんでもない間違いでしたっ！



ザレた急坂あり、雪渓あり（アイゼンは無くても大丈夫です）・・・・



極め付けが、人の体以上ある安山岩の巨石がゴロゴロした道を延々と下らねばならないのです！
大岩の頂点を辿って飛び跳ねるように降りなくてはならないため、バランスを取るのと、足首への負担がハンパありません！


　
天狗原の木道まで、30分近く、この大岩下りが続きます。めちゃくちゃキツいです。



11：45　天狗原、木道エリア到着
しかも、木道にでて、ホッとできるのは10分ほどだけ・・・・


　
このままロープウェイに行けるのかと思いきや・・・・



さきほどまでの大岩ではないにせよ、再び岩道下りが続きます・・・もう・・・・ダメ・・・・・


　
気温も18℃まで上がってきて、ずいぶん暑く感じます。途中、銀嶺水なる水場もありますが・・・・水はチョロチョロで、とても喉を潤す雰囲気ではありません。


　
栂池自然園まで400ｍの標識を過ぎると、やっと栂池山荘の建物が見えてきました。



12：45　栂池山荘到着（標高1,850ｍ）
白馬乗鞍からの、この下り・・・今回の山行で一番辛かったかも・・・・・
正直、このルートは、登りでも下りでも・・・・もう通りたくないっす・・・・


　
なんとか下り切ったご褒美に「さるなしソフトクリーム」を注文。すごくサッパリしたお味で、おいしいですよ。



　
ここからロープウェイとゴンドラリフトを乗り継ぎ、麓の栂池高原駅（標高839ｍ）まで降りて行きます。
ロープウェイは7分ほど乗ります。一般の観光客も多く、満員です。乗務員さんが白馬の由来など説明してくれます。
運賃はロープウェイとゴンドラリフトのセットで片道1,920円です。


　
次はゴンドラリフト「イヴ」へ・・・・こ、これは懐かしい！スキーにハマっていた時代はよくこれに乗ったハズ・・・・




麓までは4.1ｋｍを約20分で降ります。終点のロープウェイ駅からですと、標高差990ｍを30分弱で結んでいます。



13：46　栂池高原駅出発
栂池高原駅からはバスで八方バスターミナルに向かいます。運賃は520円です。13：45発のバスに乗ることができました。時間帯によってはバスの時間が空いてしまうので、バス停で待っている方どうし、何人かでタクシーを相乗りするのもいいかもしれません。




20分ほどで、八方バスターミナルに到着します。



今回車は八方に置かず、猿倉まで乗り着けましたので、ここからさらに猿倉まで戻らなければなりません。
14：30のバスで猿倉に向かいます。



バスにはこれから猿倉登山口、猿倉荘に向かうハイカーさんが乗っています。
ワタシもなんだか、またこれから山登りに向かう気分になってきました（笑）



運賃は930円です。30分ほどで終点の猿倉荘前に到着する予定です。


　
14：58　猿倉到着
猿倉荘前のスペースは、この時間はけっこう空いていました。




14：59　2泊3日の白馬三山縦走ハイク終了


無事戻ってこれました。


すばらしいルートを教えてくださったあつぷりさん・・・


そして山で出会ったすべての方と・・・


わがままを聞いてくれたカミさんと家族に・・・


・・・・感謝です・・・・





帰宅後・・・・カミさんに・・・・・信州桔梗が原の限定ワインが献上されたのは・・・言うまでもないっす。




さあ、ツギはどの山にのぼロウか？




ちなみに3日目のログです。



沿面距離　12.1ｋｍ
累積標高（＋）607.8ｍ
累積標高（－）1508.3ｍでした。



3日間の総ルートはこちら



沿面距離　27.4ｋｍ
累積標高（＋）3330.3ｍ
累積標高（－）2728.7ｍ
でした。

ワタシにとって、テン泊装備での山行は、ここらへんのボリュームが最適かも・・・・
て、いうか、これ以上となると・・・・・正直キツいです（泣）