「怪我をしない道」と呼ばれる、黒部峡谷の水平歩道。
久々登場のご近所さん1号と、その真偽を確かめに行って参りました!
その1からの続きです。

いよいよ、本格的に水平歩道が始まりました!

岩壁に沿って張られている番線を頼りに・・・・

一歩一歩、道の状況を確かめながら、足を運びます。

歩き始めは、結構灌木が崖下から伸びていて、
道幅は確かに狭いものの、あまり高度感は感じません。

1m以上の道幅があるところも結構あり、
カラダの右側や上方の岩壁以外は、普通の登山道とあまり変わらない感覚で歩いて行けます。

怖さよりも、四方から迫る紅黄に色づいた木々に心奪われてしまいます。

ただ、あまり景色にばかり気を取られていますと・・・

湧水が流れ落ち、苔生した岩の上を歩いたりもしますので、
十分足元を確認しながら歩かないと危険です。

道の窪んだスペースには、ところどころ補修工事用の木材や番線が置かれており、
状況によってスグ対応できるようになっていました。
1963年に黒部ダムが建設された際、中部山岳国立公園内にダムを設置する条件の一つとして
(旧)日電歩道と水平歩道を一般登山者向けに維持・補修することが、
当時の厚生省より管轄する関西電力に義務付けられました。
そのため、関電は毎年数千万の費用をかけて両歩道の整備を行っているそうです。

水平道の始点から30分ほど歩くと、また鉄塔が現れ、その脇をすり抜けていきます。
この道は関西電力の黒部川第四発電所から延びる送電線の巡視路としても使われています。

進めば進むほど、紅葉が鮮やかになってくるようです。

この水平歩道・・・・・
もともとは富山のアルミニウム会社が、多くの電力を必要とするアルミ精錬の為、
水力発電用ダムを自前で建設することを計画し、その調査を目的として
1920年(大正9年) に開通させた道です。
つまり開通してから、かれこれ
100年近く経過しているわけで
冬期の豪雪、雪崩や岩盤の崩落などで道が途切れているところもあります。
そういう場所は、高巻いて迂回せざるを得ないので、「水平」とはいいつつも、細かいアップダウンもあります。

アップアップ!

ダウンダウン!!

さきほどの鉄塔から間もなく、今度はトンネルが現れました。

一人が身を屈めて通れるような小さく短いトンネルです。
出口はすぐそこですので、ヘッデン無しで歩いていけます。

道は尾根と谷を交互に通過していきますが、谷に出会うたび地形に沿って内側に蛇行しますので
なかなか前に進んでいる感じがしません。

ただ、谷ではV字地形のため、対岸が間近に見え、先行者や対向者の様子や距離感は良く分かります。

おっととと・・・・
谷の奥は、湿っていて湧水や苔で滑るところが多いので、他人様の観察はほどほどに(笑)

尾根側は日照時間の関係でしょうか、紅葉がホントに見事!

おっととと・・・・・・
で、でも、身を屈めて通り抜ける大木のトンネルもありますので、紅葉を愛でるのもほどほどに・・・。

まっ、でも、こんな景色が目の前に現れれば・・・・そりゃ・・・ね~
もし、今日が晴れていたら・・・・多分・・・・・
撮影に夢中になって・・・・・
ぜんぜん前に進めなかったでしょう(笑)
1号は番線をしっかり握って、谷底をのぞき込もうとしています。
そ、それは・・・・・あ、あんまり見ない方が・・・・・(汗)

黒部川を挟んだ対岸に、巨大な岩山が迫ってきました。
クライマーさん達の間で
「黒部の怪人」と畏怖される
奥鐘山(標高:1,543m)の西壁です。
幅1km・高さ800mにも及ぶ日本屈指の岩壁は、
黒部別山大タテガビン南東壁
「黒部の魔人」・丸山東壁
「黒部の巨人」とともに黒部三大岩壁に数えられています。

辺りの気温は14℃
曇り空のせいか、あまり気温の変化はありません。

この辺りから、すれ違いが多くなってきました。
足元が広く、絶壁でないところでは、お互い動きながらでもすれ違えますが・・・・

狭いところは、山側にピッタリと身体を付けて
完全に静止した状態で、対向者とすれ違います。

数少ない、休憩できるスペースも、ハイカーさんで埋まっていますので
黙々と前に進みます。
10:33 2つめのトンネル通過このトンネルも短く、ヘッデンは不要です。

この世のものとは思えない、上下180度の紅葉よりも・・・
この世のものとは思えない、遥か下方の
谷底が気になってしょうがない1号さん(笑)
なんだか、道も岩々しさが増してきました。

すれ違うのも大変っ!
あれっ!?道が途切れてるるるる???と思ったら・・・・
10:45 志合谷トンネル 到着
このトンネルは、長さが150m近くあり、かつ内部で半円形にカーブしているため外の光が届きません。
入口の標識どおり、ヘッデンが必須です。
内部も素掘りで、頭上の高さも一定でなく、岩が飛び出しているところも多々あるため
身を屈めて通り抜けなければなりません。

しかも足元には、トンネル内の岩盤から染み出す水が流れてたり、溜まってたりするため
頭上、前方、足元と、気が抜けません。
場所によっては、くるぶし以上に水が溜まっているところもありますので足の置き場にも注意が必要です。
今回、ミッドカット&ゴアテックス仕様の登山靴を履いてきたのは、この為です。

トンネル内部の岩肌にヘッデンの光があたると、ところどころキラキラと白く輝きます。

全く鉱物の知識が無いもので、ヒカリゴケの一種でも生えているのかなと思っていたのですが
どえむマスターのよっし~師匠が約3年前に同じ道を歩かれたレポを拝見しておりましたら
「花崗岩のガラス質成分が光を反射している」とのことでした。
よっし~師匠はホントに博識で、いつも大変参考にさせて頂いてます。

所々、内部を補強しているところもありますが
なにせ狭いので、すれ違うのも一苦労です。

やっと出口に辿り着きました。
トンネルに入ってから5分も経っていないのですが、もっと長時間潜っていた気がします。

さらに進むと、今度は
ごくごく最近と思われる崩落の跡がっ!
こ、これは・・・・下調べの情報にも無かったような気が・・・・・
一歩づつ足場の安定感を確かめながら、慎重に通過します。
なんだかんだ言って
・・・・ココが一番怖かったかも!(;´д`)
さらに谷に沿って、歩を進めます。
時間的には、やっぱりオリオ谷までがギリギリかな・・・・

しばらく進んで、先ほどの志合谷を振り返ります。
1938年の12月、この谷を巻き込んだ
泡(ホウ)と呼ばれる雪崩は、
黒部川第三発電所建設に伴うトンネル工事作業員の宿舎として建てられていた鉄筋コンクリート兼木造の建物を
川の対岸600mも離れた奥鐘山の岩壁まで吹き飛ばし、中で寝ていた84名にも及ぶ尊い命を奪ったそうです。
泡(ホウ)雪崩は、雪塊が落下する通常の雪崩とは違い、空気と雪粒の混合体である雪煙が200km/h以上の速度で流下し
異常なほど圧縮された後、障害物にぶつかることで数百キロパスカルという物凄い衝撃圧を発生し、その周辺のものをことごとく破壊し吹き飛ばしてしまうという恐ろしい自然現象です。
国際的な山岳規模をもつ黒部峡谷では、その威力も人智を遥かに超えたものだったのでしょう。
この泡(ホウ)雪崩のことは、もう一人の師匠、
あつぷりさんから教えて頂きました。
素晴らしい師匠に恵まれて、不肖の弟子は幸せです!(ホントですよ)

黒部峡谷の峻険な地形が生み出す自然の猛威と、電源開発の為のトンネル貫通に憑りつかれた人間とのさまざまな対決は
作家 吉村昭氏の
「高熱隧道」という小説に詳しく記されており、このエリアを訪れる際は是非事前に読んでおくことをお勧めします。
まっ、そういうワタクシも・・・・・
今回の山行の
前日に、福井市立図書館で慌てて借りて読んだんですけどね(笑)

志合谷のトンネルから10分ほど歩くと、前方にひときわ巨大な岩壁が見えてきました。
その壁面にはほとんど草木が生えておらず、これまでの岩壁とは異質な圧倒的な迫力が感じられます!

どうやら、この先が・・・・・
大太鼓と呼ばれている難所のようです。
ぐ、ぐはぁ!こ、これが・・・・・・「本当の真実」ってヤツなのか!(゚д゚|||)かなりビビる、MOZU西島こと・・・・・ご近所さん1号(笑)

覚悟を決めて、いざいざいざぁ~!

番線をしっかり握って・・・・

おっしゃぁー、なんとかイケそう!(汗)

ワタクシも、後に続きますが・・・・・

た、たしかに・・・・・・
怪我・・・・しませんわ・・・・・ココ(゚∀゚)
その後も、「怪我しない」道を歩き続けていると・・・
11:37 オリオ谷 到着これまでの垂直に近いような急峻な谷ではなく、平らなスペースもある緩やかな谷です。

オリオ谷を横切るためのトンネルが、堰堤のような造りになっているので
その上で絶景を楽しみながら、昼食にしましょう!

ワタクシは、宇奈月温泉手前のコンビニに売ってた、どん兵衛・グリーンカレー味・・・・
に、2度目は・・・無いな・・・・(涙)

1号は、コンビニの惣菜パンで手堅くまとめています(笑)

当初の計画より早くオリオ谷に到着できたので、30分ほどゆっくり食事休憩が取れました。
お腹も一杯になりましたので、眠くならないよう気を引き締めて、来た道を戻ります。

帰りは、岩壁を彩るスゴイ紅葉をじっくり楽しみながら戻ります。

こうやって見ていると・・・・

紅葉ってのは・・・・・・緑があるから引き立つんだなぁ~
12:46 大太鼓 ふたたび
撮影ポイント・・・・・
展望台・・・・・・・!?

・・・・・・ええ・・・・・・・・まぁ、ポイントっちゃポイントですけど・・・・(笑)
12:57 志合谷トンネル 戻り
トンネルを出てから、今回一番ヤヴァかった崩落現場を振り返ります。

平坦な道を歩いてきたハズなのですが・・・・・・
結構、足に疲れが溜まってきています。
緊張が続くので、知らないうちに余分な力が入っちゃうのかも・・・。
14:08 欅平上部 水平歩道始点・終点戻り
ここから、「蜆坂」と呼ばれる急坂を、一気に急降下していきます。

途中、欅平体験ウォーク的な催しと思われる一般観光客の団体さんに行く手を阻まれましたが(笑)
14:42 欅平駅前広場 戻り
ソッコーで、一番近い温泉のある猿飛山荘へ!
おつかれさまっしたぁ~♨
予定より早く下山できたので、予約より前の電車に変更してもらおうとしたのですが・・・・
全く空きが無く、1時間以上待つことになってしまいました。
まっ、ギリギリの時間を予約して、焦って下山しなくちゃならなくなるよりは良かったのかも知れません。
18:00 宇奈月温泉駅 戻り「怪我をしない道」の真実を確かめるべく、水平歩道を歩いて来ました。
確かにヤヴァイ場所を歩いてきたのは間違いないのですが・・・・・
丸太の桟道などはものすごく整備されててブレや緩みは殆ど感じませんでしたし、
道自体も長年に渡り踏み固められていて、
ちゃんと二本の足で垂直に立てている接地感が物凄くあるので
正直、事前にイロイロ想像してたほど怖くはありませんでした。
まっ、これで風雨が強かったりしたら・・・・全然難易度は変わってくるんでしょうけど・・・・
来年こそ、今回辿り着けなかった「阿曽原温泉」へ!
そして、その先の「下ノ廊下(旧日電歩道)」も歩いてみたいっす!!!さあ、ツギはどのお山にのぼロウか?
ちなみに、今日のログです・・・・。
GPSの受信状態が厳しかったようで、相当ルート表示が乱れてしまっています。
申し訳ありません!
いつもの標高グラフも今回はナシでお願いします。
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