2017.3.19～20 冬がゆく前に 天狗岳 ヘタレ撤退編 （ソロ）

　親父・・・。
　「高校んときの自転車持ってきてくれんか？」
　「新品やとこっちじゃ盗まれそうやし、アレが丁度いいんやって！」
　アンタ・・・・・・。
　「子供んとこいくんなら、米持っていってあげてよ！」

　去年から大学に進学し、中京圏に住んでいる息子から、金の無心ならぬ・・・自転車の無心・・・・
　それを聞いたカミさんから・・・・お米5ｋｇの、お届け命令・・・・
　ツギロウ家の生態系ピラミッドの頂点＆上位に位置するおふた方に逆らうわけにはまいりません！




　車に、ご所望の二品、無理やり詰め込んで、いざ息子の住む学生マンションへ出発っ！

　・・・・・ただし・・・・・・荷室には・・・・・・

　65Lの大型ザックと冬山装備一式も積み込まれていましたとさ・・・・・ムフフフフッ！




ほとんど思いつきで練り上げた今回の山行プランは、こちらっ！

①　福井から米原回りで中京圏の息子のところへ行き、米と自転車を届ける。
②　そのまま中央高速道路を使って八ヶ岳連峰へ。
③　その日は、ゆっくりテン場までとして、まったりくつろぐ。
④　翌日、早めに山頂アタックして、余裕を持って福井に帰る。

う～む・・・・
わ、我ながら・・・・完璧ぢゃないか・・・・・
ただ、このエリアは今まで足を踏み入れたことがなく、どのお山も標高2,500m超の冬山となるため不安も募ります。




そこで、その不安を少しでも解消するために選んだ場所が、八ヶ岳連峰の中でも、夏沢峠より北の山域です。
横岳・赤岳・阿弥陀岳といった中級～上級クラスの険しい冬山が連なる「南八ヶ岳」とは対照的に
穏やかで比較的初心者向けのお山が多いエリアで「北八ヶ岳」と呼ばれています。
なかでも、北八ヶ岳の最高峰、天狗岳（標高：2,646m）は、登山ルートに危険な場所がほとんど無く、通年営業の山小屋＆広いテン場もあるらしいのです。
まさに、冬の高山初心者＆初雪中テン泊のワタクシにとって理想のお山ではありませんか！






ただ・・・・・
心配なのは風・・・・
お天気ナビゲーターによると、今日明日と天気は申し分ないものの、風は強めのよう・・・・
特に20日は、風速20ｍ以上の暴風になる恐れがあるようです。





とゆーわけで、やって参りました奥蓼科。
息子へ自転車とお米を届けるのは・・・・後回しにして（笑）
比較的風が弱めな今日のうちに、山頂まで行ってしまい、その後テン泊。
暴風予報の明日はさっさと山を降り、息子にご所望の品を届けてから福井に帰る計画に変更ですっ！




さっそくヤマレコの便利機能、ヤマプラでシュミレーションし直してみると・・・・
麓の渋の湯から10：00に登り始めたとして、山小屋とテン場のある黒百合平に12：30
そこから東西の天狗岳山頂に登ったとしても、15：30にはテン場に戻れることが解りました。
もちろんこのタイムは、途中休憩無し＆コースタイムどおりに歩いた場合で算出されてますので
実際には、コースタイムより速く歩いて、食事や休憩の時間を確保する必要があります。
今回は、それらに加えて、テント設営の時間も稼いでおかねばなりません。
重いテン泊装備＆雪道を考えると、チト・・・いやいや、だいぶ不安は残りますが・・・・




9：20　渋の湯到着　
福井を4：30頃出発しましたので、休憩や朝食の時間を入れても、５時間弱で到着したことになります。
途中ずいぶん前から何台も路肩に車が停まっており、駐車場が満杯なのは予測できましたが、
ダメもとでここまでやってきてみて、駐車場を仕切っているおばさんに聞いてみたところ・・・・
「丁度今帰る車が１台あるので、そこに停めればいいよ」「先に御殿湯のフロントで受付してきて」
とめちゃめちゃラッキーなお言葉！
遅めの到着が、逆に幸いしたようです。




受付で２日間分の駐車料金2,000円をお支払いして



駐車票を貰うと、先ほどのおばさんが駐車場所まで案内してくれます。





エプロン姿が素敵な、働き者のおばさん走る！（笑）　見事な仕切りっぷりです。



後ろの、ポルシェカイエンが出たあとに停めさせて頂きました。




駐車場のすぐ横におトイレがありますので、安心です。




渋御殿湯前の広場には多くのハイカーさんが。バス停の前に固まっているので、これから帰られる方たちかな？




建物の脇から川に沿って、登山口へ向かいます。




登山口の直前に、登山届を提出できる小屋があります。ワタクシもここで提出いたしました。




このエリアは、渋の湯からのルート以外にも、唐沢鉱泉や麦草峠など、様々な登山コースがあるようですね。




10：10　登山開始
小屋の横の小さな橋を渡って、山道に入っていきます。




登山道はやや傾斜があるものの、しっかり踏み固められており、ツボ足で登って行けます。




麓から針葉樹の森が続きます。予報通りお天気は良さそうです。
噂の八ヶ岳ブルー、体験できるかな？





高速道路のような広く歩きやすいトレースで、俄然調子が上がってきて先行者を何人か抜き去ったところで・・・





GPSを落っことしてきたことに気づき、慌てて戻ります。
抜き去ってきたハイカーさんに、不審な目で見られながら降りていきますが、なかなか見つかりません。
結局、登り始めたあたりまで戻ってようやく発見！
かれこれ20分近くロスしてしまいました（泣）




気温は0℃ですが、風も無く、走り降りたり、探し物でバタバタしたので、全く寒さは感じません。
ソフトシェルは脱ぎ、ミドルのパーカーのみでも汗ばむくらいです。




11：12　2122ピーク到着
多くのハイカーさんが休憩されていました。




ほぼほぼコースタイムどおりか・・・・
落とし物した罰として、休憩ちょっとだけの刑ですな(;´д｀)




ミレークンブの65Lザックに防寒具増し増しのテン泊装備を詰め込んできました。
ただ通年営業の山小屋があるので、食材・食料・水分は最低限の分しか持ってきていません。
また、事前の下調べでスノーシューは要らなそうだったので、装備から外しています。
そのため16ｋｇ弱で収まったのですが・・・・
テン泊装備で歩く雪道は、ホントに疲れますっ！
銀杏峰の予行演習で十分かってはいたのですが、やはり夏とは疲れ方が全然違いますね～




2122ピークから先は、緩やかで快適なトレースが続きます。




ただ、途中の分岐点で、他にいくらでも休める場所があるにもかかわらず
標識の真ん前・・・・・
トレースの真ん中・・・・・
ご丁寧にケツの下に敷物までして・・・・・
のんびりパンを食っているUMA（未確認生物）を発見っ！
ここまで筋金入りの珍獣に出会う確率は、オコジョ並みか・・・
あっ、いや、例えるにしてもオコジョに失礼でした。





気を取り直して、先に進むと徐々に頭上を覆う針葉樹がまばらになってきました。




もう少し標高が上がると、森林限界を超えるようです。





12：10　黒百合平到着
ソーラーパネルの屋根が印象的な、黒百合ヒュッテが見えてきました。






収容人数150人、通年営業のありがたい山小屋です。
小屋の前にすぐテン場があり、便利さや安心感がハンパありません。






ちょうどお昼時・・・・
明日の暴風予報さえなければ・・・・・
美味しそうなメニューを頼んで、ビールをたらふく飲んで、ゆっくりテント張って、
思う存分昼寝する・・・・という貴族のようなスケジュールが可能だったのですが・・・（泣）




現実は・・・・
飯も食わずにテントの受付を済ませ・・・




初めての雪上でのテント設営に、めちゃめちゃ手間取り・・・・・




掘ったり、埋めたりの繰り返しで、結局、設営完了まで1時間以上もかかってしまいました(;´д｀)




13：58　山頂アタック開始
その後、簡単な行動食補充やドーピングをして、山頂アタックの準備が整ったのが14時直前っ！
貴族の優雅さとは程遠い、まったく余裕のない行程です。（泣）
テン場の前に、壁のようにそそり立つ激急登の斜面から続々とハイカーさんが降りてこられるので
聞いてみると、ここから天狗岳に行けるとのこと。




なにせ余裕のないワタクシは、よくよく地図で確かめもせず、一気に急登を登り始めます。
登り切ったところには大きな岩塊があり、ここまでテン場から5分ほど。
2212ピークで見た地図には、たしかテン場から5分で中山峠と記されていたので、ここがその峠なのだろうと勝手に解釈して先に進みます。




急登を登り切ると、一気に視界が開け、目指す天狗岳の全貌がいきなり目に飛び込んできます。




「天狗岩」と呼ばれる山頂近くのデカい岩塔を天狗の鼻に見立てて、つけられた山名のようです。




足元は、雪と岩のミックスルートが続きます。




途中の標識にも「ここは天狗の奥庭」と思いっきり書いてあるにもかかわらず、中山峠から天狗岳へ向かうルートを歩いていると確信してるワタクシ・・・



実は急登があるため、登りでは敬遠されて、下りで使われることが多いルート（赤い点線）を通っていたのです。
思い込みとは恐ろしいもので、全く気づきませんでした。




ただもう、眼前に迫る山頂に、速く辿り着く事しか考えてません。




一旦鞍部に下り降りてからの登りが、部子山を彷彿とさせて・・・・見ただけで・・・ツラいっす（泣）




おっ？傾斜の緩やかな稜線上を進むルートもあるのか！？
などとボケたことを思っていましたが・・・・これが本来の中山峠経由ルートだったんですね・・・・




稜線に近づくにつれ、それまでの青空を、どんよりとした雲が覆い始めてきました。




風もかなり強くなり、雪も降ってきています。




や、ヤバいっ！
このまま、天気が崩れ出したら・・・・
気ばかりが焦ります。




14：38　稜線のルートと合流。




遠目には険しそうに見えた天狗岩ですが、中腹を巻くように進むので、それほど危険は無さそうです。




トラバース路も、多少狭いところはあるものの、しっかり踏み固められており不安はありません。




おおっ、山頂の標識が見えてきました。




先着のハイカーさんが何人かいらっしゃるようなので、少しホッとしました。




14：54　東天狗岳山頂到着（標高2646ｍ）




山頂には、先ほど稜線を登っておられた先着のハイカーさんがお一人。




雲が出てきて、やや明瞭ではなくなってきてるものの、
なだらかな硫黄岳の後ろに、赤岳・中岳・阿弥陀岳が見渡せます。




おおおおぅ・・・・赤岳・・・・・




う～むむむっ・・・・阿弥陀岳・・・・・・・
どちらも、ワタクシには100万年早いお山のようです。




天狗岳は双耳峰なので、300ｍほど先に西天狗岳があります。
今いる東天狗岳とは対照的で、丸い山頂がすっぽり雪に覆われています。




風は強さを増し、薄暗い雲は頭上に広がる一方・・・・
思い出したように雪も降ってきます。

しかも、よくよく見ると山頂手前は、どエライ傾斜ぢゃないの・・・・・・

万一、この後さらに天候が悪化して暴風＆ホワイトアウトになっちゃったら・・・
万一、西天狗との往復に時間がかかり過ぎ、薄暗い中この山域を彷徨うことになってしまったら・・・
万一、万一、万一・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





・・・・・・・ヘタレ撤退・・・・・・・決定っ！(*･｀ω´･)ゞ




15：05　下山開始
・・・き、きょうは・・・・この辺で・・・・か、か、かんべんしといたるっ！（白目）





そうと決まれば、逃げ足は速い（笑）
ヤセ尾根だろうが、急坂だろうがサクサク降りていきます。
おっ、でも今から登っていくロトの勇者様とすれ違います。
「が、がんばってくさいっ！ワタシは帰りますっ！」




山頂では全然余裕が無かったのですが、鞍部までもどってきて気温を確認すると-3℃



あたりは一層暗くなり、
陽が落ちると、さらに気温は下がりそうです。
いやぁ～やっぱりすぐ下山して良かった！
そ、そうだ、すれ違ったロトの勇者様、ダイジョウブかな？
恐る恐る振り返ってみると・・・・・・





・・・・・・晴れてんじゃん！(ﾟ△ﾟ;ﾉ)ﾉ
ど、どこまでも行けるね、勇者様・・・




いや、いや、いや、
こ、これでいいのだっ！パパなのだぁ～！
ほら、影もこんなに伸びちゃって・・・・
こんな時間まで冬山を歩いてたらダメなんやって！





15：40　黒百合ヒュッテ戻り






お疲れさまでしたぁ～！


さっきまでの風と雲と雪はなんだったんだっていうくらい・・・・

サンサンと輝く夕陽に向かって

・・・・乾杯っす・・・(つД`)ノ



初雪中、へたれテン泊編に続く。







ちなみに今日のログです。




テント設営に、どエライ時間がかかったのが丸わかりで、恥ずかしいっす(/ω＼)